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脱走軍艦~榎本武揚・考 再び [還暦の荒野をめざして]

時代が移り自分たちの信奉して来た価値観が意味を持たなくなった時、それでも生きてゆかねばならない不器用な時代のお荷物はどのように先を見定めれば良いのか?榎本武揚という人物が滅びゆく幕府の中で懸命に“パラダイム転換を試みた生き様”は高齢者の私に勇気とヒントを与えてくれる。
「脱走軍艦」と呼ばれて新天地を求めて彷徨った榎本武揚ら一行は北の大地・蝦夷に到着した。新選組から土方歳三を加えた最後の幕僚として、札幌・五稜郭で頼るもののない壮絶な戦いを繰り広げたが勝敗は既に決していた。振り返ってみれば勝てることなど考えてもいなかった様に思える。生き永らえる事よりも、今の自分たちに悔いのない死に場所を探していたのかも知れない。君主に仕え我が身よりも家の名を第一に考えた当時の侍たちの心情など、今に生きる私たちに理解できる筈はないだろうけれど、それでも自分たちの生き様に価値を見出せずにいる事は耐え難かったはずだ。

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今の日本の高齢者問題に置き換えて考えてみれば、それは目の前の生きがいや目標を見失った高齢者たちの姿に置き換えることが出来る。すべてが間違いなく正しかったとは言えないだろうけれど、これまで信じ続けて来た信条の様なものを時代の変化と共に簡単に覆すことは難しいものだ。時代の潮流が変わったと云えばそれまでなのだが、戦いに敗れた敗戦国民の様にさっさと新しいご主人の意図に従うには、高齢者たちは歳を取り過ぎている。
自業自得・自己責任…確かに一理はあるのだが、その様に仕向けた“時代の権力”=裏で笑っているものたちにも落とし前をつけてもらわなければならない。

現代の高齢者たちはスマートになったように思われているが果たしてそうだろうか?そうやってうまく担がれてお調子者にされている“若い”高齢者たちこそが時代を読み間違わせる一番の原因かもしれない。
普通に考えれば高齢者は社会の一線で役立つものではない。役に立たないと分かった上でどう生きれば良いのかを指し示すのが指導者の役目ではないだろうか。そういった意味では今の世の中で時代をまとめる真のリーダーを見つけることは難しいのかも知れない。

現代に榎本武揚のような人物が居ればどの様に考えるだろうか?大勢を率いて「脱走軍艦」の舵を何処に向かって切ってゆくだろうか?いやそれ以前に、私たちは「脱走軍艦」に乗船する資格があるのだろうか?

榎本武揚.jpg

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いっぷく

自己責任という、いざとなったら個人に責任を押し付ける言葉は便利に使われていますね。
私は、人生とは、「ほしのもと」をいかなる価値観で受け止めるかだと思っていますから、つまり、その人の「能力」というのも、生まれ持ったものや生活環境が前提となったその反映だと思っているので、自己責任とか、自業自得とか、成果主義とか紋切り型に結果だけを求められてしまうと、そりゃ自分で必要だと思えばできることはがんばりますが、でも社会としては、きっと諦めとか無力感など、停滞につながることだろうなと思います。
by いっぷく (2019-08-05 03:19) 

ぼんぼちぼちぼち

榎本武揚、、、恥ずかしながら、あっしは安部公房の戯曲でしか知りやせん。
まあ、あれはあくまでも事実を元に起こしたフィクションだと思うので、きちんと勉強しないとなあと思いやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2019-08-07 15:41) 

扶侶夢

>いっぷくさん、ご来訪&コメント有難うございます。
自己責任、言葉としては“御もっとも”なんですけれど確かに便利に使われている感がありますね。言葉というものにあまり多く期待をしてしまわない様にというのが私の考えです。

>ぼんぼちぼちぼちさん、ご来訪&コメント有難うございます。
安部公房の戯曲に榎本武揚が登場するのですか?私はまったく知りませんでした。興味津々です。
by 扶侶夢 (2019-08-11 17:54) 

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