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この先をどう生きるか [還暦学講座:第二部]

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『いつまでも若かった頃の幻影を追いかけていても始まらない。そんな事はロマンチストな私でもよく分かっている事だった。それでも無性にセオリーから外れて突拍子もない事に心惹かれるときがある。歳をとってから起業を志してみたり、放浪の旅に出掛けたりするのもそういった衝動の表われだろう。何にも頼らずにどこまで生きてゆけるのか、そんな事は幻とどこかで分かっていた筈なのに試したい気持ちがあった。正直なところ、体力はすっかり衰えて中年の頃に頑張りの元となっていた粘りは影を潜めているが、ここ数年の間自粛して封印して来た腕白で我が儘だったかつての意気が少し頭をもたげてきた様に思った。
これまで何度か痛い仕打ちを受けて、人生を甘く見ていた自分に喝を入れて悔い改めた私の筈だったが、もう残されている時間が少ないと思ったとき無性に何かに命を賭けてみたくなった。』・・・
 そんな書き出しで始まった自己満足の短編ストーリーだったが、気がついたら物語からは程遠い処に立っている自分がいた。ある意味で自分自身を裏切って生きているのかも知れない。夢の中ではロマンを求めている様なのだが、いざ現実に戻ると萎えた自分を抱え込んでしまう。威勢のいい割には月並みな生き方を選んでしまう…はっきり言って「小市民」というヤツだ。しかし、だからこそ我を忘れられる様なひと時を求めるのだろう。『還暦学講座』に於いては「ロマンを求める生き方」も題目のひとつになるかも知れないと思った。

 日常を超えた非常識な生き方は、社会からリタイアした身分だからこそ出来るとも考えられる。世のしがらみを越えて己の価値観に忠実に生きる機会は、リタイアして世捨て人となった者でしか得られないのかも知れない。そういった意味で “ロマンに生きる生き様”は現実から遊離した妄想の一種でもあろう。若者はよく世の中に背を向けて夢を実現するようなことを口にするが、本当にそれだけの気概を持ってチャレンジする者を見つける事は稀である。世の中の傘の下で世の中の一員として生きている限り、世の中と折り合いをつけて生きている証しなのだから…本当の反逆児はほとんどの場合は投獄されるものである。
 この世界に生まれて「小市民」としてでも生きていられるという事は “幸い”な事である。人間の権利すら持ち合わせず生命を失う人たちが大勢いる世界なのだから、勝手な事を言って生きていられる我々はマシな方だろう。しかし、かと言って自分自身を生きているかと云えば、それはどうなのだろう?考えてみれば、生まれてからこれまでどれだけ自分の欲するままに生きて来れただろうか。そこでひとつの問題提議である。「もうあと残された時間が少しという状況の中で何か納得と確信の持てる行動をしたいと思わないだろうか?」

 多くの人の “死に際と死に様”を見て来て思うことは、ほとんどの場合死に際して人は無力である。苦しんだり悔んだりもすることはあるが、どれくらいの長い時間なのか他人には分からない。一瞬の様でいて永遠の様でもあり、すべては本人の “定め”である。そこで私は考える「今際の時に納得と確信のある覚悟を持っていたい」それには今からでも遅くはない、何かひとつでも「自分の信じ切れるもの」を “秘かに”感じ取ることだろう。

 子供の頃から胸の奥に秘めて来て、いつの間にか忘れ去ろうとしていた “決して普段の生活の中では口にしてはいけない事”をそっと思い起こしてみよう。これまでの人生で私が行なってきた事すべては露のように消える定めなのだ。本来の私の心に秘めて来たものを残しながらたった一人の終活をしよう。

 

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いっぷく

「世のしがらみを越えて己の価値観に忠実に生きる」、浮世のしがらみにとらわれなくてもよいのは出家した人ではないでしょうか。
まあ、実際には生身の人間ですから、寺の中の人間関係もドロドロしたものがあるかもしれませんが、少なくとも対外的には仏につかえる身なので、浮世のあれこれと無縁でいようと思えばいられる立場でありましょう。もっとも、坊主も霞を食って生きていけるわけではないので、そのあたりの算段が難しいところでしょうね。
by いっぷく (2020-07-27 13:48) 

扶侶夢

>いっぷくさん、ご来訪&コメント有難うございます。
世のしがらみを越えて…というのはあくまでも理想ですね。所詮生身の人間ですから、その枠の中からは飛び出せません。西遊記の中で、孫悟空が遥か現世から離れてやって来たと思ったら実はお釈迦様の掌の中だったというエピソードが大好きでした。
by 扶侶夢 (2020-07-29 21:14) 

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